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日支事変がはじまつて既に四年、しかもいはゆる聖戦の目的はまだその半ばをも達成してをりません。しかも、世界動乱の渦は欧洲大陸より太平洋に波及し、わが南北には文字通り、新たな国境――国を挙げて死守しなければならない明確な一線が地図の上に引かれたのであります。

雅重おい、典重。元気を出せ。医者がなんといはうと、人間の生命は、天が支配するんだ。軍医が匙を投げた負傷者で、立派に立ち直つた例がいくらでもある。

しかし時々あなたは、すばらしく私のあなたにおなりになさいますのね、御自分で私の着物を見立てに銀座へ行らしつたり、おいしいものを喰べに連れていらしつたり、観音経のお講義をして、私の難問を解いて下さつたり、気に入つたポーズをさせてスケッチをとつたり、さういふことはまた得て世間に誇大に拡がり安いもので、いかにあなたの愛物でわたくしがあるかを云々し、まゝそこまでは宜いとして、それがために、私はその境遇にあまへて私の芸術にあそび気まゝにお金ばなれの好い暮らしをして居ると非難がましくいふひとがあるさうです。

まだお目にかゝりませぬのにK・Rは今も猶平和な主婦としてこの世に在るやうにお思ひ遊ばして居られるやうでございますが、K・Rは今地下に靜に眠つてをります。Rさんは酒田のH家のやゝ遠い親戚として其H家を檀家に持つ大きいお寺の末の娘に生れました。ほんとに箸より重い物を持たない位にしてはぐくまれたのでした。けれど、Rさんは小さい時から寂しい人でした。私とは一つちがひのいとこで、家もすぐ近くで學校さへ一年ちがひの身でいながら、十四で早くも詩集を手にして校庭の松蔭で寂しさうに考へ深さうに讀み耽つているRちやんと、ラケツト手に飛びまはるおてんばの私とは、しつくりしませんでしたが、女子文壇へ盛んに投書したのは女學校を卒業する十七の春ごろからで、十八の秋『見知らぬ人に添ふ』と淋しみながら若い人妻となつて轉々しました。三人の子の母となつて幸福に暮しましたけれど、四人目の姙娠中再び起ちがたき病に罹り、人工流産をすゝめられながら、母の偉大な愛からそれを厭つて遂に三年前小さき者を生むと其まゝ、小さき者と共に逝きました。

リッケルトの科学論が夫々の科学的世界の現実的内容にまで食い込むことが出来ず、従ってそれだけ現実的・実践的・実際的でないということ、之を吾々は見たし、又之を人々はよく説くであろう。それが科学論にとって、結局は一つの致命的な欠陥となることを否定出来ないであろう。併しこの欠陥は、他の点に於て、非常に尤もな理由を有っている。今この理由を理解するのでなければ、リッケルトの科学論を根本的な動機から把握したことにはならないであろう。リッケルトの科学論の動機の一つ――それは今まで学問の分類それに従って又方法論の動機となって現われた――は、根本に於て、学問性の特色を明らかにするという動機によって動機されていることが見出されるであろう。何となれば事実彼は、単に学問の分類を――他の多くの人々が百科辞典的興味からしたように――学問の分類として企てたのでもなく、又単に方法論を各個科学夫々の方法の理論として試みたのでもなくして、全く、自然科学に於ける学問性が歴史学に於ける学問性をまでも圧倒しようとした諸科学の一時的歴史状態に基いて、特に自然科学的学問性――それを彼は一般化的概念構成に求めた――から、歴史学的学問性――価値関係づけ――を防護しようとする関心から出発したのであったからである。それ故にこそ、彼の科学論は学問分類一般ではなく、特に自然科学と歴史科学との限界を与えるべき「区別の徴表」の発見をその課題としたのであったし、又この二つの科学に就いても夫々の方法の現実的内容にまで立ち入って規定することを当面の課題とはしなかったのであった。自然科学と歴史科学との限界、而も夫々のもつ学問性の区別、之を見出すことがリッケルトの科学論の根本的な動機をなす。

煙どうもさうぢやないかと思ひました。やはり、肺が両方とも完全に冒されているといふことです。

*以下特に断らない限りRickert-DieGrenzendernaturwissenschaftlichenBegriffsbildung-KulturwissenschaftundNaturwissenschaft-DieProblemederGeschichtsphilosophie参照。

平成二十年八月九日、広島から四里あまり離れた地点で、僕は防空壕の中にいた、あの不思議な新兵器のことは、この附近の人にも知れ渡つていたが、まだ何といふ呼び方をするのか判らなかつた。壕のなかで一人の青年が僕に話しかけた。

「おい、何をするか。乱暴な」

加来もう臂のところまで、しびれて来た。

今や一般的にこう結論することが出来る。方法概念は最後に、学問性の概念として現われる。ここに現われた方法概念は、もはや単に、任意の対象を取り扱う研究の方法でもなければ、科学的概念構成の手続きを意味するのでもなく、又科学がもつ科学的世界の基礎として現われるのでもない。方法概念のこれ等様々の形態が終局に於てそれに帰着し、又之にその根柢を持っている処の、学問にとって恐らく最も意味の重い方法概念が、学問性であるであろう。

桃山哲郎は銀座尾張町の角になつたカフエーでウイスキーを飲んでいた。彼は有楽町の汽車の線路に沿うたちよつとしたカフエーでやつた仲間の会合で足りなかつた酔を充たしているところであつた。

見よ、今やわが部落は征服階級のみの部落ではない。彼等はすでに先きの非を悟って被征服階級たる吾等に参政権を与えた。万人は法律の前に平等であると。

「あはは……」
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